背景・課題DE&Iを組織に浸透させるための3つの課題。根底に共通していたのは「対話」の不足ひろぎんホールディングスは、広島銀行を中核とするひろぎんグループを統括する持株会社です。私たちの部署ではダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を組織に浸透させるため、次のような3つの課題を挙げ、解消につながるための施策を企画・提供しています。1つは、女性が表舞台に立って組織をけん引する機会の少なさです。これは、女性がその機会に恵まれてこなかった、自ら率先して担いたいと言い出すことが難しかったという社会的背景もあります。この実態をどう変えていくかが課題です。2つめは、男性、女性に限らず、誰もがライフステージの変化と仕事を両立できる世界をつくることです。女性の育児負担を軽くするといった限定的な話ではなく、男女ともに両立していくためには、組織の中にどうパラダイムシフトを起こすかが問われています。3つめは、上司と部下のコミュニケーションにおけるアンコンシャスバイアスです。男女間の配置と仕事のアンバランスさ、不公平さをどう解消するかが課題です。これら3つを挙げたときに、共通する本質的な課題は「対話不足」ではないかと考えました。そこで、課題解決のための大きなキーとして、「対話」に力を入れることにしました。「対話」を取り上げる以前は、企画力やマインド面の研修を中心に実施していましたが、どのようなスキルも、”意味を聴き合う””感じていることを伝え合う”という本質的な「対話」の浸透があって、より一層活かせるものではないかと考え、ここ数年間は「対話」に注力しています。「対話」を重視して3年目。新たに見つかった課題とは?NOKIOO講師による研修は、2022年度から行っており、2024年度は3年目です。社内では2〜3年前から始めた1on1ミーティングが定着してきており、「対話が大事である」という考え方は文化として浸透したと感じます。しかし、次のステージとして、部下の意見を尊重することと、対話を部下の育成につなげることのバランスが重要だと気付きました。特に女性活躍推進においては、重要度が高い課題だと考えました。そこで、NOKIOOに新たな課題を共有し、3年目の対話研修を企画しました。研修企画・狙い上司が部下との対話で悩みがちな評価・目標設定面談にフォーカス研修企画に当たってこだわったのは、マーケットイン(顧客の声を聴き、顧客のニーズに合ったモノを開発・提供すること)の考え方です。パッケージ型の研修はどうしてもプロダクトアウト(マーケットインの対義語で、企業が作りたいモノや企業の方針に合致するモノを開発・提供すること)になりがちです。この場合、研修の内容には満足しても、日常の行動が変わるまでの期待が持てないケースがあります。研修を日常業務での行動変容につなげるためには、実務に即した内容でなければいけません。そこで、上司が部下との対話で一番困るであろうタイミングや内容を考え抜き、現場に役立つと感じてもらえる設計を目指しました。具体的には、上司が悩みがちな評価面談や目標設定面談での対話にフォーカスしました。例えば、部下に伝える評価が部下の自己評価に比べて低いときに、上司はどうフィードバックすれば良いか悩みます。また、目標設定面談で部下が持ってきた目標が甘かったとき、それを尊重すべきか、目標の難易度を上げるべきなのか悩みます。あるいは、育休復職後の女性部下に対して、「どのレベルの仕事を任せるか」と目標設定に悩む上司もいます。そこで、こうした社内でよくある評価面談や目標設定面談のシーンをNOKIOOにシェアし、研修の中で扱うケーススタディーに落とし込んでもらいました。NOKIOOからの提案部下の成長を加速させる目標設定とフィードバックのポイント 管理職の方々が実際の面談実施の前に、対話の重要性を実践的な演習を通して学んでいただけるよう、現実に即したリアルな演習ケースを準備しました。また受講者同士の対話も交える構成にしながら、受講者自身が自ら考える学習設計を意識しました。研修実施・効果「これは必須研修にするべき」。受講生から予想以上の良好な反応。研修は本部・店舗、グループ会社に所属する管理職やリーダー層の社員から任意で受講者を募り、オンラインで行いました。告知時期がちょうど評価面談前のタイミングであったため、募集文言に上司の悩みとフィットする言葉を入れられたことで、多くの受講者が集まりました。当日は受講者に集中力の高い中で研修に参加してもらえたこともあり、反応も想像以上に良好でした。ケーススタディーでは受講者がイメージしやすい身近な対話シーンや事例を取り上げたため、実践をリアルに描くことができているようでした。終了後に、受講側から「これは必須受講にするべき」という声を聞けたのは嬉しかったです。また、あえて役職のくくりは設けずに受講者を募集したため、管理職ではない一般職社員も数名参加してくれました。「とても勉強になった」「自分が上司になったときに活かせる」といった声が聞かれ、どの階層にとっても満足度の高い研修になったと感じました。NOKIOOには事前の告知タイミングから当日の運営方法まで一緒に細かくチューニングしてもらったため、運営面でも非常にスムーズでした。例えば、グループに分かれて受講者同士が対話する時間を設ける一方で、受講のハードルを下げるため「耳だけ受講」を受け入れることとし、いずれの参加形態の方にも満足いただけるような進行をしていただきました。受講者がストレスなく参加できる工夫を、3年間、一緒に試行錯誤をしてもらったおかげだと思っています。講師の「返し」が受講者にスッキリ感を与え、学習意欲を高める当社のNOKIOOとの最初の接点は、取締役の小田木朝子さんと出会い、NOKIOOが運営する「育休スクラ(現スクラ)」の講義を見学したことです。そこでNOKIOOは育休復職者の苦しみや脱出法について多くの知見を持っていることを知り、2022年度に、社内で育休復職者向けの両立支援セミナーを開催してもらいました。この時、印象的だったのが、講師の言葉選びや返答の解像度の高さです。受講者がモヤモヤした状態で言葉を発したり、ふわっとした回答をしたりしても、「それって要はこういうことですね」「背景にはこのようなことを思っていらっしゃるのでは」と見事に言語化されていました。これにより受講者のスッキリ感や満足度が跳ね上がり、学びの意欲を高める効果があると感じました。これをきっかけに、NOKIOOには「対話」研修を中心にお願いしています。DE&Iはテーマ特性上、世間一般的に多くの人が「自分は意識できている」と思っていることも多いテーマでだと感じます。その意味でも、NOKIOOが第三者として、外部視点から寄り添ってくれることにも意味があると感じています。まとめ他者とつながるために、自己との対話も深めたい今回の対話研修はまさに上司たちが求めている内容だと感じましたので、今後も継続的に実施し、今回届けられなかった人たちに届けたいと思っています。あらゆる課題の根幹に「対話」が眠っているという仮説からの研修企画でしたが、さらに紐解くと一番の課題は「自己との対話」ではないかと考えます。「自分は本当はどう思っているのか」という自身の本音とつながれていない状態では、他者ともつながれないからです。今後、少しずつ触れていけたら嬉しいテーマだと考えています。また、人はケーススタディーに繰り返し取り組むことで、知識が定着します。こうした研修のドリル効果をどう担保するかも、今後の課題です。研修の前段階にある「自己との対話」と、研修の後段階にある「ドリル効果」について、どう仕組み化するか考えていきたいです。