取り組み概要【実施内容】・ヘルプシーキング講座をセミナー形式で実施。・NTTグループ全体より公募で集まった2,000名。(アーカイブ視聴含む) 【背景・課題】・D&Iに経営戦略として取り組む中で、「D&Iは誰か特別な人を支援するもの」という固定観念を変える必要性を感じていた。 ・ヘルプシーキングはD&Iを新たな視点で捉え直せる体系的なコンテンツだと感じた。 【結果】・『ヘルプシーキング』が共通言語としてグループ内で浸透。 ・ 女性や育児中の方に限らず、D&I推進につながるチーム視点での言動が増加。 目次実施の背景 D&Iを企業文化の土台に。両社の課題意識から共同企画が実現 ーーー 本日は、NTTグループの日本電信電話株式会社(以下NTT)様・西日本電信電話株式会社(以下NTT西日本)様にヘルプシーキングセミナーの導入背景や効果についてお伺いします。まずは、御社の紹介や今回、共同企画に至った背景を教えていただけますか? 柳様: NTTはグローバルや国内各地域を含めた事業会社で構成し、グループ全体のビジョンを発信しています。2023年にNTTグループの社長が交代し、経営戦略の中でD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を価値創造に必要な企業文化の土台と位置づけたことが背景にあります。 D&I推進に当たっては、会社からメンバーを指名して研修を受けてくださいというものではなく、受けたい人が自発的に受けられるようなセミナーをやることが重要だと考えていました。 甲斐様: NTT西日本は、通信で地域社会の課題解決を行うことをめざしています。西日本エリアで事業展開する当社では、D&Iの文化浸透が首都圏と比較して温度差があると感じていました。そこで1年前から、毎月D&Iセミナーを行い、発信量を増やしてきた結果、相当数の社員が興味をもって参加してくれるようになりました。この取り組みがNTTにも伝わり、グループ共同企画の1つとして、今回の取り組みに至りました。 ーーー 経営戦略の中でD&Iを土台と位置付けたということですが、御社グループ内にあった課題感をお伺いできますか? 柳様: D&I推進にあたっては、社員の満足度がイノベーションにつながるという考え方がベースにあります。NTTグループの従業員は国内だけでも18万人という規模であり、社員には多様な人がいるからこそ、広く対応していくことが課題でした。 甲斐様:D&Iに対する社内の認知度を高めることや、「D&Iは誰か特別な人のもの」という固定観念を変えることも課題でした。“女性や障がいのあるマイノリティの方を助けてあげるもの”という認識をもたれている方もおられるかもしれませんが、D&Iとは突き詰めると、自分自身や周りの人を認め、1人ひとりが力を発揮し、組織として成果が出る状態にすることです。NOKIOOの提唱する「ヘルプシーキング」という考え方が、新しい視点からD&Iを捉えるきっかけになると感じました。 ーーー ヘルプシーキングは「一人で抱え込まず、周りに助けを求める」ビジネススキルです。私たちはチームで仕事の成果を出すためのスキルという観点で研修を提供していますので、新しい視点でD&Iを捉えるきっかけにしていただいたのは、嬉しいです。 甲斐様: おっしゃる通りですね。社内には「D&Iを推進して事業成果につながるのか」と感じる人もいますので、その疑問を解消することも重要でした。 ーーー 多くの企業を支援する中で、多様性が必要だという認識は進んだと感じています。一方で多様性が事業成果につながるという納得感は、もう少しステップを踏みながら浸透を図っていく必要があるとも感じます。そのきっかけとして、ヘルプシーキングセミナーを活用いただく機会が増えているのは嬉しいことです。 研修への期待 歴代No.1の参加者数2,000人超。高い関心を集めた理由と期待 ーーー 今回のヘルプシーキングセミナーはNTTグループ全社員を対象としてオンラインで開催し、2,000人を超える方が参加されました(アーカイブ視聴者を含む)。また、事前に質問を募ったところ、たくさんの質問やコメントが届いたとお聞きしています。高い関心を集めた背景をどのように考えていますか。 柳様:参加者2,000人は 歴代のセミナーでナンバーワンでした。質問やコメントは800ほど届き、2.5人に1人が書いてくれた計算です。もともと、講師であるNOKIOO取締役の小田木朝子さんが執筆されたヘルプシーキングの入門書『仕事は自分ひとりでやらない』を読んで共感したという声が社内で挙がったこととから、今回のセミナー企画が始まりました。その意味でも、社員の事前の期待値も高かったと思います。年度初めの4月に開催したことも良かったと思います。 ーーー 嬉しい反響です。年度初めにグループ全体で実施いただいたことで、NTTグループ様の本気度が伝わってきました。柳さん、甲斐さんを含めた企画側としては、セミナーにどのようなことを期待されましたか? 柳様:先ほどお話に出た「D&Iが事業成果につながること」への理解を期待していました。ヘルプシーキングは男女や役職を問わず、また育児や介護中に限らず、仕事で困ったときに人に助けを求めたり協力者を募ったりすることです。過去の研修でこういった話は出てきていたものの、概念化、体系化された内容を聞ける機会は少なかったので、必要だと感じていました。 甲斐様: 女性社員については、引け目や自信のなさを払拭し、「ごめんなさい」から脱却することを期待していました。社内では「仕事に長時間は費やせない立場なので、引け目を感じる」「周囲に『助けて』と言えない自分が悪い」といった声がありましたが、視点を変え、チームでの目標達成を第一に考えてヘルプを伝えられるようになってほしいと思いました。 研修後の反響・変化 「チームとして」をキーワードに起きた、視点の変化 ーーー セミナーを実施した結果、どのような反応や変化が見られましたか? 甲斐様: これまでの経験ではあり得ないような反応がありました。通常のセミナーでは「良かった」という個別のコメントはそれほど届かないのが実情です。しかし、今回のセミナーでは個別の感想がとても多く、中には「もう一度やりたいから(講師を)紹介してほしい」「再度やってみたい」といった声もありました。また、社内で「ヘルプシーキング」という言葉が広まり、いまだに使われています。これもすごい変化です。 柳様:そうですね。今はもう「ヘルプシーキング」という言葉を普通に使うようになりましたね。職場のチームミーティングでも「チームとして」という枕詞を使う機会が増えています。 甲斐様:女性や育児中に限らず、周囲に助けを求める力(ヘルプシーキング)はビジネスパーソンにとって本質的なものだと定義したことが良かったと思っています。 ーーー 「私が困っている」ではなく、「チームとして何かできないだろうか」と考えるだけでも、私視点からチーム視点に切り替わります。御社内で「ヘルプシーキング」や「チームとして」が言葉として残っているというのは、とても嬉しいことです。 NOKIOOへの評価 チームワークや提案の深さが決め手。グループ会社からも評価 ーーー 取り組みパートナーとしてNOKIOOへの評価やお感じになったことがあればぜひお聞かせください。 甲斐様: NOKIOOは初回ミーティングでの議題設定や限られた時間で聞き出していただく量、その次の提案の深さが素晴らしかったのを覚えています。また、チームワーク力が非常に高く、型がしっかりと確立されている印象です。複数の担当の方と実施に向けてやり取りしましたが、担当者が交代されたことに気づかないほど、どの方も安心感がありました。 外部企業との連携には大きな責任が伴うため、私たちはパートナーの選定には慎重になるところもあります。しかし、今回の依頼時に迷いはなかったですね。NOKIOOは短時間で最大の成果を考え続けるチームだと感じました。 ーーー ありがたいお言葉です。われわれは決して完璧なチームではなく、ブラッシュアップし続けるチームでありたいと思っています。 甲斐様:いいですね。 それも、いつかセミナーのテーマにしてほしいと思えるぐらいです。 柳様: セミナーの満足度も非常に高く、NTTとNTT西日本以外のグループ会社からも高評価をもらっています。 今後に向けて/担当者の思い NTTグループのD&I推進が生む変化の波 ーーー NTTグループではこれからも企業文化としてD&Iを推進されると思います。最後に、お2人が今後、見据えているテーマやめざしたいことを教えて下さい。 甲斐様: D&Iに対する社員の理解度は深まってきていますが、社員のなかにはまだ全く興味関心をもってもらえないこともあります。そのため、今後はどれだけ多くの社員に理解してもらえるかを、細かく追っていくフェーズだと感じています。 柳様: 必ず押さえておくべきベーシックなテーマは大切にしつつ、今後はヘルプシーキングやイノベーションなど、時代に合わせた新しいテーマも織り交ぜながら、進めていきたいと考えています。 ーーー 御社は社員規模が大きいため、グループ内にD&Iが浸透することで起きるインパクトの強さを想像しております。 甲斐様:おっしゃるとおりです。グループ全体では相当な社員規模になりますので、当社が変われば社会へのインパクトも大きいと思っています。 ぜひ、日本社会全体が変わり、ジェンダーギャップ指数の世界ランキングで下から数えたほうが早い状態から脱却できるよう、D&Iをたゆまず推進していきたいです。