▼目次実施の背景「with S」研修の起こり・狙いーーー 本日は、NOKIOOがプログラムを提供した2024年度の企業横断型研修「with S研修」において、幹事を務められたスター精密株式会社の新屋敷様にお話を伺います。まず、そもそも「with S」とはどのような集まりなのでしょうか。新屋敷様:「with S」は静岡を拠点とする5社――静岡ガス・静岡鉄道・しずおかフィナンシャルグループ・鈴与・スター精密――が協力し合い、「静岡で働く魅力を高める」ことを軸に活動している企業連携プロジェクトです。各社の業種も事業規模も異なるため、互いに異なるバックグラウンドや経営資源を持ち寄りながら、地域創生につながる施策を探っています。--- その中の一つの取り組みが「with S研修」というわけですね。新屋敷様:おっしゃるとおりです。「with S研修」は5社合同で実施する人材育成プログラムで、互いの知見やリソースを共有しながら「新たなビジネス価値を創造できる人材」を育てることを狙いにしています。最終的にビジネスアイデアが生まれれば理想的ですが、本質的な目的はグループワークを通じた課題解決力やリーダーシップの醸成にあります。--- 研修自体が始まった経緯や過去のテーマについても教えていただけますか。新屋敷様:もともと静岡ガス・静岡鉄道・しずおかフィナンシャルグループ(当時静岡銀行)の3社で走り始めたプロジェクトに、鈴与と当社スター精密が加わったのが2022年度です。そこで初めて5社合同の研修を実施し、今回が3回目の開催でした。初年度は、県内でSDGsに取り組む企業さんなどとコラボし、地域企業の課題解決にチャレンジしました。翌年はマーケティングを学ぶ泊まり込み形式の合宿を実施するなど、毎年テーマも形式もゼロベースで企画しています。研修企画社員の学びと地域への還元を両立する研修を目指して---「with S」の取り組みのご紹介をいただいたところで、ここからは今回(2024年度)の研修企画についてお伺いします。まず、企画の起点について教えてください。新屋敷様:実は今回は、企画の立ち上げがかなり難航しました。「with S」の5社はそれぞれ事業の形も課題感も異なるため、共通のテーマを決めるに当たり、なかなか方向性が一致しませんでした。そんな中、今年度の幹事である当社が、別の研修プログラムでご一緒していたNOKIOOさんに「課題の特定から一緒に伴走してもらえないか」とご相談をさせていただきました。--- ありがとうございます。確かに、業態の異なる複数社で一つの企画を立てるというのは、想像以上に難しいことかもしれません。では、そこから研修のケースワークとしてJリーグの清水エスパルス様に協力いただくという方向性が浮かんだ経緯についても教えていただけますか?新屋敷様:2023年の研修は地域企業とのコラボレーションではなかったため、今年は「どこかと連携したいね」という話が、最初の段階からありました。そんな中で、5社はエスパルスさんとの関係性が強い企業が多く、クラブ側から若年層の新規ファン獲得に課題を感じているという話も伺っていたんです。「それであれば、ぜひ題材として取り上げさせていただきたい」と、自然な流れでエスパルスさんとの連携が進んでいきました。--- エスパルス様は、まさに地域の魅力や誇りの象徴でもあり、そういった企業と取り組むことは「with S」の思想とも非常に親和性があるように感じました。では、この研修をNOKIOOと一緒に立ち上げる中で、重視されたポイントについてもお聞かせください。新屋敷様:大前提として、自社の社員の学びがあることが一番ではあるのですが、それ以上に、NOKIOOさんやエスパルスさんと共に取り組むことで、静岡県内に新たな価値が生まれるといいな、という想いがありました。「with S」として、単なる研修にとどまらず、地域にポジティブな変化をもたらせるような取り組みにしたいというのが、今回の大きな意義だったと思います。--- 現場に持ち帰って活かせる学びであることに加え、限られた時間内で成果を出すという点も、特に意識されていましたよね。新屋敷様:はい。過去2回の研修を通じて、どの参加者も非常に前向きに取り組んでくださって、逆に熱が入りすぎてしまうこともありました。ただ、業種や勤務形態、就業時間の違いもある中で、誰かに過度な負担がかかってしまうような構造は避けたかったんです。ビジネスの現場では、限られた時間の中で成果を求められるのが常ですから、「残業前提でいいものを作る」のではなく、「制約がある中でも質を追求する」という考え方は、どの社にとっても共通認識でした。今回はその点も重視して、プログラムを設計しました。受講者の変化異文化・異年齢のグループから生まれた、本気のアウトプット--- 今回は「問いのデザイン」をテーマに、地域に根ざしたエスパルス様の課題をケースとして扱いながら、全4回・約3か月にわたるプログラムを実施しました。回を重ねる中で見えてきた受講者の皆さんの変化について、印象的だった場面があれば教えてください。新屋敷様:Day1からDay4にかけて、皆さんの“ギアがどんどん上がっていく”のが本当に印象的でした。Day1に各社混成のグループで自己紹介をして関係性を築くところから始まり、たった4回の中で、良い意味で切磋琢磨する空気に変わっていきました。Day2、Day3と進むにつれて、皆さんの表情も変わってきて、本気で議論に向き合っている様子が伝わってきました。ただの交流ではなく、真剣に「いいアウトプットを出そう」とする姿勢がどのグループにもあり、後ろで見ていてもとても良い場だったと感じています。また、当社の話になりますが、今回のような公募制の研修に初めて参加した社員が「全く違う会社の人」や「年齢が離れている人」とどう接すればよいかと戸惑うことがあり、自社の他部署のマネージャーや同僚に相談する場面もあったようです。そんな動きもとても良いストレッチになったなと、非常に嬉しく感じました。--- なるほど。参加者一人ひとりが葛藤を抱えながらも、それを乗り越えようとする姿勢が見えたのですね。そうした内省や変化は、アンケートなどにも表れていましたか?新屋敷様:はい。研修中に実施した振り返りアンケートの中でも、「今回少し遠慮してしまったので、次はもっと積極的に声をかけようと思う」とか、「逆に自分が話しすぎてしまったので、次は相手の話を引き出したい」といったコメントが寄せられていました。一人ひとりがちゃんと自分を振り返り、次の行動につなげようとしていた点も、非常に印象に残っています。運営者としての手応えと振り返りリフレクションが気づきを促進。運営も余裕を持って向き合えた--- 改めて今回の研修を振り返って、運営を担当された立場から「これは良かった」と感じた点があれば教えてください。新屋敷様:まず、「問いのデザイン」というテーマが、5社共通の課題意識に合致していたことです。NOKIOOさんに企画段階から伴走していただいたおかげで、「これは全社共通で取り組むべきテーマだ」と事務局側も納得して臨むことができました。そもそも「問いの設定」や「課題の抽出」といったテーマは、研修における“金字塔”のような存在であり、多くの企業で重視はされているものの、実務と結び付けて継続的に改善できている例はそれほど多くありません。実際に、今回参加した30〜40代前半の実務経験者からは、「自分にはこういう癖があるんだな」「この観点が抜けていたかもしれない」といった気づきが多く聞かれ、このテーマに向き合えたことは非常に有意義だったと感じています。--- そうしたテーマ設定がしっかり腹落ちしていると、場の空気感にも良い影響が出てきますよね。新屋敷様:そうなんです。加えて、参加者のバックグラウンドが多様だったため、当日どんな雰囲気になるか少し不安もありました。年齢や性別、国籍、所属企業も異なる中で、「良い意味でリラックスした空気感」で進行してもらえたのは、まさに期待通りで感謝しています。もう一つ大きなポイントは、当日の段取りに追われすぎて参加者の様子が見られないという「運営あるある」にならずに済んだことです。今回はNOKIOOさんの進行配慮もあって、私たち事務局は参加者の様子をじっくり見たり、他社の人事同士で情報交換をしたりする余裕が生まれました。工数を最小限にしていただいたことで、本来集中すべきところに時間を使うことができました。--- 研修の「場」を一緒につくっていけるという感覚を持っていただけたのは、私たちとしても非常に嬉しいです。新屋敷様:特に印象に残っているのは、Day4に1日かけて行ったリフレクションの時間です。参加者一人ひとりが「うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」をしっかり言語化していました。「ちょっと悔しいな」と感じていた方もいたようですが、それを個人でレポートにまとめるのではなく、グループで対話しながら振り返るという形式だったことが、すごく良かったと思います。皆さんそれぞれの視点を持ち寄りながら話せたことで、気づきが深まり、最終的には「やりきった」という表情でDay4を終えていたのがとても印象的でした。研修の成果をその場で感じられたこと、そして前向きな気持ちのまま職場に戻っていける空気感があったことは、事務局としても大きな手応えでした。今後に向けて地域とつながる学びを、静岡の未来とともに育む--- 最後に、今後に向けての展望についてお伺いできればと思います。「with S」の今後の活動でも構いませんし、社内における人材育成の観点でもお話しいただけたらと思います。新屋敷様:「with S」については、ちょうど今年度の計画をしている段階ですが、今回のように静岡県内の企業や団体と連携しながら実施する形には、非常に価値があると改めて感じています。エスパルスさんのように、地域との接点があるパートナーと一緒に取り組めることが、参加者の学びの質にも大きく影響していたと思います。当社としては、こうした公募型で、かつ県内企業と接点が持てる研修のスタイルは、非常に意義があると感じています。まだ3回目ということもあり、参加者は自発的に手を挙げた、いわば“意欲の高い”層が中心ではありますが、彼らが研修で得た経験を現場に持ち帰り、周囲と相談したり共有する中で、少しずつ社内にも「あの研修、面白かったよ」という声が広がってきているようです。--- 積極的に参加した方の言葉が、次の一歩につながっていくんですね。新屋敷様:そうですね。最初は手を挙げた一部の人だったとしても、そこから少しずつ「自分も挑戦してみようかな」と思う社員が増えてくれたら嬉しいですし、今後も社内でこの取り組みを前向きに広げていけたらと考えています。--- 今回のような形で、県内企業間での学び合いや共創が続いていくことで、地域全体にとっても良い流れが生まれていきそうですね。本日は、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。結びに各企業担当者様コメント※掲載は50音順【エスパルス様】地域や地元に関連した課題テーマを選定し、企業を超えた参加者の方々と共に解決するという、一般的な研修の枠組みにはない地域との繋がりも大切にする研修フォーマットが新鮮でした。企業間のシナジーを創出することができる、このような取組みに「課題提供側」として参加できたことは、地元企業の皆さまとの新しい接点という意味においても、またご一緒させていただきたいと感じております。【静岡ガス様】with S研修は、単なる集合研修にとどまらず、「この5社だからこそできること」を念頭に企画・運営しています。今回の研修では、5社ともにお世話になっているエスパルス様の企業課題に対し、混成チームで本質的な“問い”を設計し、アウトプットへとつなげることができました。さらに、さまざまな視点や思考が交差することでシナジーが生まれ、参加者自身にとっても、事務局である人事担当者にとっても、非常に効果的な研修となりました。【静岡鉄道様】研修を通して「問い」を立てる大切さや、メンバー同士での目線合わせの必要性など、物事を考えるためのプロセスを学ぶことができました。参加者は、今回の研修で学んだことを日々の業務にもいかして活躍してくれています。また、地域企業5社が合同で研修を実施することで、自組織とは異なる文化や考え方に触れることができました。多様な価値観に触れ、地域へ目を向けることで「共創」の視点が育まれたのではないでしょうか。NOKIOO様やケース協力してくださったエスパルス様など、このような学びを共につくってくださったみなさまに感謝申し上げます。【しずおかフィナンシャルグループ様】今回の研修では、グループでのケースワークやプレゼンテーションでのフィードバック等のカリキュラムを通じて、受講者自身の弱みや課題を知ることができ、意識が変わる研修となったとの声が上がりました。研修で構築した新たな人脈を継続していただき、今後もこのネットワークを活用しながら地域の未来を切り拓く行動へとつなげていただくことを期待します。【鈴与様】今回の研修では、「目的志向」「問いを立てる力」「グループ対話力」の向上を図ることはもちろん、「with S各社の知恵を活かして新たな価値を創造し、相互に刺激し合い成長すること」に重点を置いて参加しました。研修終了後、参加者からは「他社の参加者」から得た学びや刺激について多くの感想が寄せられ、狙い通りの成果があったと考えています。社内研修では得られない学びや気付き、刺激が多くあるため、今後も“越境”経験(=社外メンバーとの研修・交流)を通じて社員が成長できる場を提供していきたいと考えています。