取り組み概要背景・店舗運営からエリア単位でのマネジメントへと役割が広がる中で、リーダー層において「業務を抱え込んでしまう」「周囲に頼りにくい」といった課題が顕在化していた。・専門職(薬剤師・調剤事務)としての責任感の高さから、個人で完結しようとする傾向があり、チームで成果を出すための連携が十分に機能しづらい状況にあった。・こうした背景から、「周囲を巻き込みながら成果を出す力」を組織として高めていく必要性が高まっていた。取り組み・2024年にリーダー層を対象とした「ヘルプシーキング研修」を実施し、連携を通じて成果を生み出す考え方を習得。・その実践で得た手応えをもとに、2025年は部門全体への展開へと発展。学習動画を通じて全体に考え方を浸透させるとともに、新入社員研修と組み合わせ、理解から行動までを一貫して支援する設計とした。・さらに、エリア単位でのユニット化や定例ミーティングの場を通じて、相談・連携を促進する仕組みづくりもあわせて推進した。結果とこれから・「ヘルプシーキング」という言葉が共通言語として定着し、日常的なコミュニケーションの中で相談や協働が自然に生まれるようになってきた。・リーダーだけでなくメンバーや新入社員も含め、一人ひとりが連携の主体として動く変化が見られ始めている。・今後は、継続的な働きかけを通じて一過性に終わらせず、組織全体で支え合いながら成果を生み出す状態のさらなる定着を目指す。目次実施の背景新任リーダーが増える中で顕在化した“抱え込み”の課題ーーー 本日は、静岡県浜松市に本社を置き、静岡県を中心に調剤薬局やスーパードラッグストアを展開されている杏林堂薬局様にお話を伺います。2024年、2025年と弊社の「ヘルプシーキング研修」を導入いただきました。まずは、皆様の自己紹介をお願いします。邑瀬様:私は調剤営業本部の中にある医療教育部に所属しており、NOKIOO様の研修当時は、医療教育部長の立場で最初から関わらせていただきました。青山様:薬局運営部で調剤事務チーフリーダーをしています。当社は現在、店舗のうち約90店舗が調剤室併設または調剤専門店として業務にあたっており、その中でエリアが4つ、さらに8つのブロックに分かれています。それぞれのブロックに調剤事務リーダーが配置されており、私はそのリーダーたちを統括する立場です。高梨様:私は薬局運営部で、8ブロックのうち、静岡県西部の中東遠エリアの調剤事務リーダーをしています。普段はエリア内の店舗を巡回する役割と、実際に店舗で勤務する役割を担っています。ーーー ありがとうございます。早速ですが、2025年の取り組みに先立ち、2024年にリーダー層向けに、「ヘルプシーキング研修」を実施いただきました。当時はどのような課題感があったのでしょうか。邑瀬様:2024年の研修は、統括エリア長やエリア長、薬剤師の業務推進リーダー、調剤事務リーダーなど、各エリアでチームをまとめる立場のメンバーを対象に実施しました。当時は、新たにリーダーに就任するメンバーが増え、現場で活躍してきた人たちが新たな役割を担う中で、戸惑いも多かった頃でした。薬剤師は職種柄か、真面目で責任感の強い人が多く、「周囲に迷惑をかけずに自分で何とか頑張らなければ」と仕事を抱え込みやすい傾向がありました。青山様:調剤事務リーダーも課題は同じでした。それまで一店舗で勤務していた人が、急にリーダーとしてエリアの複数店舗を担当する立場になるため、相談やタスクの量も一気に増えました。しかし、「全部自分でやらなければ」という固定観念があり、誰に相談していいのか分からないまま悩みを抱えてしまっていました。私自身も、リーダーになった当時はまさにそうでした。高梨様:私もちょうど2024年に事務リーダーになったタイミングでこの研修を受けました。当時は、先輩リーダーの方々のほうが自分よりずっと忙しいだろうという思い込みがあって、「今聞くのは申し訳ない」と考えてしまうことが多かったのを覚えています。ーーー 青山さん、高梨さん、実体験からの補足をありがとうございます。新たな役割や業務量が一気に増える中で「自分で抱え込む」「周囲に頼りにくい」という状態があったことがよく分かりました。リーダー向け研修を通して、どのような変化がありましたか?邑瀬様: 研修の評価としては「役立つものだった」と答えた人の割合を示す「有効度」では100%、「実践できると思う」と答えた人の割合を示す「実践度」は89.5%と、いずれも高い水準の結果となりました(※基礎編の研修評価より)。また、その後、エリア長にヒアリングをしたところ、研修後はチームワークが整ってきたという声がありました。エリアの一体感が出てきた、お互いに頼みやすく、相談しやすくなった、という実感があったようです。実際に、メール返信やチャットのリアクションが増えるなど、日常のコミュニケーションにも変化が見られました。青山様: 私も、リアクションの増加をすごく感じていました。役職就任の社内通知などにも以前より反応が増え、「〇〇をお願いします」といった声が自然に飛び交うようになり、いい風土になったなと感じました。士気が上がった感覚もありましたね。また大きかったのは、「ヘルプシーキング」という言葉そのものが部内で共通言語として根付いたことです。ただ、相談のしやすさは個人の性格にも左右されるので、個人任せにせず、部内全体で仕組みとして支えられる形が整えられました。各エリアでエリア長、薬剤師リーダー2名、調剤事務リーダー2名の5人を1ユニットとし、毎月エリアミーティングでヘルプシークする場を設けました。さらに、もともと事務リーダーが一人で担当していた業務も2人体制に変更し、声を上げやすい環境づくりにつなげました。研修が、そうした仕組みづくりのきっかけになったと思います。ーーー 「ヘルプシーキング」が言葉として根付くだけでなく、現場の仕組みにも落とし込まれていったのですね。高梨様: 実際にユニットで動いてみると、毎月のエリアミーティングがあることで、今までは言えなかったような小さなことでも相談しやすくなりましたし、チャットでも巡回中に起きたことを共有しやすくなりました。巡回の際にも「何かないですか」と声をかけることを意識するようになり、以前より幅広く質問が出てくるようになりました。困った時に言える関係性が、少しずつできてきたのではないかと感じています。研修の展開と設計組織へ浸透させるための2つの取り組みーーー リーダー層での取り組みを経て、2025年は部門全体への展開と新入社員へのフォローアップ研修をご一緒しました。改めて、この意思決定の背景について教えてください。邑瀬様:2024年に本部員やリーダー層が先行して研修を受けたことで、「ヘルプシーキング」はビジネススキルとして欠かせないものだと感じ、部門全体へ広げたいと判断しました。そこで翌年は予算を確保し、調剤営業本部全体への展開として企画しました。ーーー 2025年の取り組みの目的として、部門の全従業員が「ヘルプシーキング」の考え方や必要性を理解し、部内の共通言語となっている状態を目指しました。全員に広げるにあたっては、展開の仕方も重要なポイントでしたよね。邑瀬様:はい。正社員、パートナー社員、管理薬剤師など立場を問わず対象としたため、どのような形で実施するか模索していたところ、NOKIOO様から、隙間時間でも受講できる動画での「ヘルプシーキング研修」を提案いただきました。見て終わりにならないよう、確認テストも設けて、学習として定着する形を設計しました。ーーー さらに今回は、学習動画で「ヘルプシーキング」の考え方を理解した上で、行動を促して定着につなげるという観点で、事後に新入社員向けのワークショップを組み合わせました。邑瀬様:新人が期待を胸に入社したのに「なんか違う」と感じることは避けたいという思いが大きかったです。当社にはもともと「オーベン・ネーベン制度」という、新人に対して2〜3年目の先輩を中心に教育担当がつく仕組みがありますが、それに加えて店舗のメンバー全員が「ヘルプシーキング」の考え方を持つことで、新人にとってより働きやすい環境になるのではないかと考えました。また、新人側にも業務で指示を待つのではなく、自分から連携やヘルプを出すという行動を早い段階から身につけてほしいという思いもありました。動画での理解から対面ワークショップでの実践までを、一連の流れとして設計できたのは大きかったですね。研修後の変化新人の質問量に変化。声を上げやすい組織風土へーーー 新入社員を受け入れる側として、現場ではどのような変化がありましたか。青山様:まず大きかったのは、リーダー層だけでなく、部門全体が「ヘルプシーキング」という考え方を知っている状態で新入社員を受け入れられたことだと思います。現場でも、リーダーが巡回の際に「誰に相談してもいいですよ」といった声かけをするようになっていて、相談しやすい環境には確実に近づいてきていると感じています。ーーー そうした土台がある中で迎えた新入社員の皆さんには、例年との違いも見られましたか。邑瀬様:はい。8月に新入社員がワークショップを終えた後、9月に新人の教育担当から提出された報告書を見ると、「例年よりも新人の質問が増えた」という声がありました。実は8月、9月頃は基本的な業務は一通り教わっている時期なので、先輩に聞きづらくなってくるタイミングでもあるのですが…。研修の中で、「聞かないことの方がチームの成果につながらない」「聞くことも役割の一つ」という話を繰り返し伝えていたので、一度教わったことを改めて聞くハードルが下がったのだと思います。今後に向けてヘルプシーキングを組織に根づかせ、患者様への提供価値へ ーーー 最後に、今後に向けての展望をそれぞれお聞かせください。邑瀬様: 「ヘルプシーキング」についてワークショップまで受けたのは新人と本部員で、それ以外の人たちは動画視聴が主でした。動画視聴後のアンケートを見ると「困っていそうな人に声をかける」といった意識は生まれていましたが、時間が経つと熱量が下がることもあると思います。なので、一過性で終わらせず、研修や動画の見直しも含めて継続していきたいですね。ゆくゆくは杏林堂薬局の中で「ヘルプシーキング」の研修を独自に実施できる形に持っていきたいと思っています。高梨様: リーダーの中では「ヘルプシーキング」はかなり当たり前のものになってきていますが、それを店舗の現場にも広げていけたらと思っています。 だからこそ、巡回の中でこまめに声をかけることはこれからも大事にしたいです。私は新しい事務リーダーのメンターも担当することになったので、次の世代にもつないでいきたいですね。青山様:どの立場であっても「ヘルプシーキング」の考え方は必要だと思っていますし、それを1年目の早い段階からスキルとして根づかせていく仕組みは、これからも整えていきたいと思っています。また、「ヘルプシーキング」が患者様への価値にもつながっていくといいなと感じています。今、杏林堂薬局では接遇の強化にも取り組んでいますが、一人で仕事を抱え込むと結果として患者様をお待たせしてしまうこともあります。 店舗を円滑に回し、よりよい対応につなげるためのものとして、具体的な事例とともに伝えていけたらと思っています。ーーー 「ヘルプシーキング」を個人のスキルにとどめず、組織の中で育てながら次の世代へつないでいく。そしてその先に、店舗運営や患者様への提供価値にもつなげていく。皆様のお話から、そうした広がりが見えてきました。本日は、ありがとうございました。