■はじめに:女性管理職育成への関心の高さがうかがえた講演2026年5月20日、NOKIOOは「HRカンファレンス2026-春-」にて、特別講演を実施しました。テーマは「女性リーダー300名超の育成データから学ぶ 行動がマインドを変える、マネジメント経験の設計」です。本講演には、NOKIOOの小田木と成瀬が登壇。女性リーダー育成の実践知と、373名分の育成データから見えてきたマネジメント経験の設計についてお話ししました。現在、多くの企業で「女性管理職育成やDE&I推進の目標はあるものの、現実との乖離がある」「管理職候補の母集団が増えない」「女性自身が管理職を自分ごととして捉えにくい」といった課題が聞かれます。そうした背景もあり、当日は開始直後からZoomのチャット欄に多くの反応が寄せられました。参加者の皆さまの関心の高さからも、女性管理職育成やリーダー候補者の意識・行動変容が、多くの企業にとって切実なテーマであることがうかがえました。■行動が先、マインドが後セッションの前半では、小田木が、NOKIOOが取り組んできた女性リーダー育成・企業支援の実践から見えてきたことを共有しました。NOKIOOでは、これまで6年間で373名の女性リーダー育成に取り組んできました。その中で見えてきたのは、「意欲を持ちなさい」と働きかけるだけでは、行動は変わりにくいということです。むしろ、チームの成果につながる行動を実践する中で、結果としてマインドが変化していく。この順番こそが重要だといいます。たとえば、当初は「絶対に管理職になりたくない」と話していた専門職の受講者が、チームを動かすことの面白さに気づき、自らリーダーシップを発揮するようになる。こうした変化を生み出しているのは、一方的な意識改革ではありません。現場での行動経験です。受講者からは、次のような声も寄せられています。「一人でやり切るのが優秀だと思っていた。でも、チームで協力した方が全体の成果は上がる」「管理職は完璧でなければならないと思っていたが、仲間の力を生かせるリーダーでいいと分かった」主語が「私」から「チーム」へ変わることで、仕事の見え方も変わっていきます。管理職になることを「一人で背負うこと」と捉えていた状態から、「チームで成果をつくること」として捉え直すことが、ステップアップ意向にも影響していくのです。ステップアップ意向、つまり管理職への挑戦意欲が高まる背景には、「エンジン」と「ナビゲーション」の両輪が必要です。「どこに向かって何を実現するのか」という目標の言語化がナビゲーションとなり、「対話と巻き込み行動」がエンジンとなる。この両方がそろうことで、チームの成果につながる行動が実践され、結果として「自分にもできるかもしれない」という自信や意欲が生まれていきます。小田木は、マネジメントを「管理職だけの仕事」ではなく、「チームの成果を最大化するためのあらゆる営み」として捉え直すことの重要性を語りました。■ データから見えたマネジメント経験の設計後半では、成瀬が、373名分のアンケートデータと事後調査のクロス分析から見えてきた構造を解説しました。データから明らかになったのは、ステップアップ意向と特に強い関係が見られた要素が、「エンゲージメント(関係性)」と「連携創出(巻き込み行動)」だったという点です。一人で全てを背負い込み、完璧でなければならないという思い込みを手放すこと。周囲に助けを求め、連携しながら成果をつくること。成瀬は、連携創出について「弱さ」ではなく、チームの成果を高めるためのスキルであると説明しました。では、こうした経験を組織の中でどのように設計していけばよいのでしょうか。成瀬は、次の3つの設計ポイントを提示しました。1つ目は、成果のデザインから始めることです。「私たちのチームは何を実現するのか」を上司と部下で対話し、ナビゲーションとなる目標を設定します。2つ目は、チームの巻き込み行動の実践を促進することです。助けを求める、巻き込む、任せるといった行動を、日々の業務の中に組み込んでいきます。3つ目は、上司が実践した行動にフィードバックすることです。研修の感想を聞くだけでなく、現場で実践した行動に対して意味づけを行うことが、本人の自信や成長実感につながります。■ 参加者の声から深まった対話チャット欄では、参加者の皆さまから多くの意見や気づきが寄せられました。「『行動が先、マインドが後』というのは、女性に限った話ではないのでは」というご意見や、「働き方などの罰ゲーム的な要素だけでなく、『あんなすごい人にはなれない』という実力面での不安も、全員マネジメントのマインドセットによって転換できそう」という声も寄せられました。また、「行動したことへのフィードバックが、『できる』という自信に寄与する。現場実践へのフィードバックこそが、効果的な上司支援なのですね」という共感の声や、「メンバーが多くなると、一人ひとりと向き合う時間がとれない」という現場ならではの悩みも共有されました。こうした対話から見えてきたのは、研修を受けさせるだけで終わらせないことの重要性です。現場で起きた行動に対して、上司がどのように意味づけし、フィードバックするのか。そこにこそ、育成効果を高める余地があります。■ まとめ:行動の経験が、リーダーへの見方を変えていくセッションの結びに、小田木は「気合いや根性、長時間労働で自分の仕事を前に進めるという考え方から、チームという観点で仕事ができるようになったとき、仕事はもっと面白くなる」と語りました。多様なリーダーを組織に増やしていくためには、リーダー候補を一人で奮闘させるのではなく、メンバー全員がチームの成果に参画する経験が欠かせません。この考え方は、女性リーダー育成において重要であると同時に、特定の層だけに向けたものではありません。最終的には、性別を問わず、すべてのビジネスパーソンがチームで成果を出す技術を持ち、自分らしいリーダーシップの選択肢を広げていくためのものです。NOKIOOはこれからも、女性管理職育成や女性リーダー育成に取り組む企業に対し、マネジメント経験の設計と現場での実践を支援し、組織に多様なリーダーが育つ土壌づくりに伴走してまいります。■ 最後にリーダー育成において、「マインドを変えよう」と働きかける前に、まずはチームで成果を上げる行動の機会と経験をデザインできているでしょうか。意識改革だけに頼るのではなく、日々の経験の設計から見直すこと。それが、「管理職になりたくない」という声の背景に向き合い、日本のチームの景色を変えていくための確かな一歩になるはずです。