なぜ、管理職のキャリア支援は「やりきれない」のか「メンバーのキャリアについて、1on1で話してほしい」人事部門から管理職にそのような期待が寄せられる一方で、現場では「将来、何をやりたい?と聞いても話が深まらない」「キャリアの専門家ではない中で、メンバーの人生に踏み込むのは重い」「管理職によって面談の質に差が出る」といった難しさがあります。9月16日に開催した55分トークライブでは、NOKIOO執行役員の成瀬と、アカウントマネージャーの古賀が登壇。管理職のキャリア支援力をどう高めるかをテーマに、「踏み込まなくていい」キャリア対話の考え方を解説するとともに、管理職とメンバーによるリアルなキャリア対話を公開実践しました。管理職がキャリア支援を「やりきれない」のは、当然のこと。今回のトークライブでは、そうした前提から対話への入り方を考えました。よくあるキャリア面談では、将来像から対話を始めるケースがあります。一方で、本人がまだ明確な答えを持っていなければ、「まだ分かりません」と話が止まり、そのまま業務の話に戻ってしまうこともあります。そこで提案したのが、キャリア対話への“入り方”を変えることです。将来の希望を聞き出すことから始めるのではなく、過去の出来事に名前をつける目の前の一歩を一緒に小さくするという、過去と現在から対話を始めます。狙いは、将来像を明確にすることそのものではありません。これまでの経験を肯定的に捉え直すことが、本人の「自分で進めていける」という自己効力感につながります。今回のキャリア対話では、そんな考え方を出発点にしました。上司がやることは、「二つだけ」では、実際の対話で管理職は何をすればよいのでしょうか。今回のトークライブでは、「上司がやることは、“二つだけ”」と整理しました。1つ目は、過去の出来事に名前をつけ、肯定的に捉え直すこと。2つ目は、次の小さな一歩を、本人と一緒に言葉にすること。どちらにも共通するのは、上司が答えを考えてあげるのではなく、主観を返しながら「一緒に見つける」という立ち位置です。では、実際の対話ではどのように進めるのでしょうか。ここからは、当日の公開実践を紹介します。公開実践で見えた、キャリア対話の進め方1.過去の出来事に名前をつけ、肯定的に捉え直す一つ目は、「経験に名前をつける」対話です。成瀬が上司役、古賀がメンバー役となり、台本なしで進行しました。古賀がこれまでの仕事や葛藤を振り返る中で、成瀬は本人とは異なる視点から、その経験に意味づけを返していきました。その中では、古賀が自分自身の歩みを「匍匐前進」のように表現した経験に対して、成瀬が「ボルダリング」という名前を返す場面もありました。本人にとっては苦労や葛藤として捉えていた経験も、別の人の目から見ると、「壁にぶつかりながらも、自分なりのルートを探して前に進んできた経験」と見ることができます。今回の対話で大切にしていたのは、過去の経験の中から問題を探すことではありません。成瀬は、「過去のことなので、問題を見出しても意味がない。肯定的に捉え直す」という考え方を示しました。上司から返された言葉に違和感があれば、それも対話の材料になります。違和感の中身をさらに聞いていくことで、本人自身がその経験をどう捉えているのかが見えてきます。「名前をつける」というシンプルなやり取りから、本人がこれまでの経験を別の角度から見つめ直す対話が生まれていました。2.次の小さな一歩を、本人と一緒に言葉にする二つ目に行ったのが、「最初の一歩の作戦会議」です。ここでは、古賀が現在チャレンジしていることを起点に、次の行動を一緒に考えました。大きな目標をいきなり設定するのではなく、「100のうち、今はどのあたり?」「二歩目に進むために、一か月でできることは?」と問いながら、現在地から次の一歩を具体化していきます。ポイントは、上司が答えを決めないことです。「例えば、こうできませんか」と提案することはできますが、それが本人の感覚と合わなければ、そこから改めて本人の考えを聞いていきます。そして最後は、次に取り組むことを本人自身の言葉で言語化します。将来の大きな目標を定めることだけが、キャリア自律ではありません。今の自分に一個足すなら何かを考え、自分の言葉で次の一歩を決めることも、自律の始まりです。周囲からの応援も、キャリア対話を支える今回の公開実践では、参加者の皆さまにも古賀の「仲間」として、チャットで応援していただきました。「わかる」「大丈夫」「いいね」といった反応をお願いしたこともあり、公開実践中には多くのコメントが寄せられ、活気のある時間となりました。キャリア対話というと、上司と本人による1対1の面談を思い浮かべがちです。しかし今回の実践では、本人の経験や次の一歩を周囲が肯定的に受け止め、応援するという関わりも生まれました。スライドでも、上司の関わりとして、主観を返す提案する応援するという3つを整理しています。特に「応援する」については、周囲からの応援が一歩を動かすという視点が示されました。キャリア支援を上司と本人だけのものにせず、周囲からの応援も対話を支える一つの関わり方として捉える。公開実践を通じて、そんな視点も見えてきました。キャリア支援を、組織の中で共創するトークライブの終盤では、管理職のキャリア支援力を高めるだけでなく、社員自身の「キャリアを語る力」にも働きかけることで、キャリア支援を組織の中に広げていく考え方にも触れました。「自分でキャリアを考える」だけでなく、「互いのキャリアを共創する場をつくる」。NOKIOOでは、こうしたキャリア自律のあり方を「共創型キャリア自律」と捉えています。9月30日(水)の連続企画第2回では、今回の「キャリア対話」から視点を広げ、「キャリア自律を個人任せにしない組織づくり」をテーマに、組織としての支援のあり方を考えました。▼第2回の詳細はこちらhttps://nokioo.jp/seminar/162最後に:次の1on1でできることキャリア対話だからといって、将来の希望を聞き出したり、上司が本人のキャリアの答えを考えたりする必要はありません。まずは、本人がこれまで経験してきたことを聞いてみる。そこに上司自身の視点から言葉を返し、本人と一緒に意味を見つけていく。そして、今の自分から踏み出せる小さな一歩を、本人自身の言葉にしてもらう。今回のトークライブでは、管理職がキャリア支援を「やりきれない」と感じることを前提に、そんな「踏み込まなくていい」キャリア対話を公開実践しました。最後に紹介した実践への入り口は、とてもシンプルです。「今までの経験に、名前をつけてもいいですか?」まずは次の1on1で、この一言からキャリア対話を始めてみませんか。